ミスト

2007年/米
監督:フランク・ダラボン
原作:スティーヴン・キング
主演:トーマス・ジェーン/マーシャ・ゲイ・ハーデン/ローリー・ホールデン 他


史上最悪のバッドエンド!
作品のテーマは『結果論』。
なにをすれば正解だったのかを、視聴者に問う作品となっている。

突如、街に激しい嵐が吹き荒れた。
翌朝、自宅の窓やボート小屋が破壊されているのを知ったデヴィットは、買い出しに行くために隣人のノートンと共に近くのスーパーへと向かった。
街は停電。スーパーは大忙し。
デヴィットが買い物をしていた所、街にサイレンが鳴り響き、老人が救いを求めてスーパーに駆け込んできた。
「霧の中には何かがいる。何かが彼を攫った」と叫び、スーパーの客を恐れさせた。そしてまもなく、街には深い霧が立ち込め‥‥一瞬のうちに覆われてしまう。
何が起きたのか分からず、この霧の正体は何なのかと探る住民たちの中、狂信的で変わり者と有名な女性カーモディは、「これはハルマゲドンの始まり」だと聖書を持ち出して、住民達に警鐘を鳴らし始めた。

事態が全く好転しないため、デヴィットは店長らと共に発電機を調べる為、倉庫へ──。
シャッターの外でざわめく音を聞いたデヴィットは、「何かがいる」と警告し、開けるべきでは無いと忠告するが、誰も彼の意見に耳を貸そうとしなかった。
「学歴が高いからといって意見するな」「あんたに何の権限がある」と罵り合い。やきもきした最年少のノームは、自らの手で何もいないことを証明してみせようとシャッター開けた。
「何もいないよ」と笑みを浮かべた彼の足首に、何かの触手がまとわりついた。
凄まじい力になす術なく、ノームは悲鳴と共に霧の中へと消えていってしまった‥‥。
やっぱり本当だったじゃないか!とデヴィットが叫ぶと、デヴィットに反発するマートンは、「“何か”の特徴を言わなかったデヴィットが悪い」と、デヴィットの言葉が足りなかったからこうなったと責めた。
ノームを死なせてしまった点については、「一番若いから彼が果敢に進むのは当然だった」と、ある意味彼の自業自得とも取れる非情な発言をしてデヴィットを怒らせた。

デヴィット達は店内に戻り、店外には何かが居るから帰宅は不可能だと告げるが、彼の意見を信じないノーマンら数人はバカげた話だと嘲笑った。
帰宅すると言い張り、他の数人を従えてスーパーを後にしようとするノーマンに、せめてデヴィットは、同行する老人の腰にロープを巻きつけ、深い霧の中で、どこまでの距離を進めているかを知ろうとした。
100mを過ぎた頃、ロープが引っ張られ‥‥手繰り寄せたロープの先には、上半身が何かに喰われた老人の死体が残されており、住民たちは戦慄に戦いた。

夕暮れになり、狂信者のカーモディは泣きながら「1人でも多くの命を助けさせてください」と必死に神に懇願し、自身の周りの住民達も、自分と同じように神の許しが訪れることを切々と願った。
そのまま、誰もがお互いを信頼しようとしないまま夜を迎え、奇怪な虫が店内に侵入して住人を襲い始め、数人の住人が殺されてしまう。
カーモディも虫に襲われそうになるものの、微動だにしなかった為に攻撃されることはなかった。
それを『神のご慈悲』として受け取ったカーモディは、「ほら見たことか」と住人達を責め、神の意志には逆らえないと高らかに吠えたのである。
偶然とはいえ、カーモディの“予言”が当たってしまったことによって、4人の信者が彼女に傾倒してゆく。
彼女の言葉こそが“神の御心”だとして、住民たちは彼女の前に跪いたのである。
カーモディは次に起こるであろう出来事を予言し、それを回避するには生贄が必要だと宣言する。

そして‥‥その生贄として相応しい者を名指ししたのである。

最悪な事態に陥っても、互いを信頼しようとせず罵り合う。
だからといって、真の悪者が存在しないのがこの作品の不気味なところ。
狂信者カーモディの行動は異常ではあるが、「1人でも多く助けさせて欲しい」と懇願した心は決して嘘ではなかった。
1人でも助けたい一心で、皆の目を覚ましてやろうと人々を扇動している。ただ、やり方が尋常ではない。しかしカーモディ本人は自分が最も正しいと思っているから性質が悪い。

スティーブン・キングの傑作『霧』を映画化した作品です。
原作と映画では少しずつ異なる点があり、ラストの“救われない結末”は原作にはない映画バージョンですが、スティブン・キングは絶賛しております。
ホラー映画は一部では、“救われない結末”であればこそ恐ろしいとされています。

本当に恐ろしいのは、『モンスター』でも『霧』でもなく‥‥“人間”だったという後味がとにかく悪い作品です。

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