ウォーム・ボディーズ

2013年/米
監督:ジョナサン・レヴィン
原作:アイザック・マリオン
主演:ニコラス・ホルト/テリーサ・パーマー/ジョン・マルコヴィッチ 他


異種族恋愛映画全盛期の80年代。
恋する対象は、天使、吸血鬼、霊、人魚、宇宙人、悪魔、魔物だった──。
2010年代、第2次映画盛期となり、ロボット、機械、AIが主流になるが‥‥ついにゾンビとの恋愛映画までできてしまった!

自分がいつゾンビになったかわからない男性。自分の名前もわからず、イニシャルの『R』しか覚えていない。
今日も仲間のゾンビと、糧(人間)を求めて街中をさまよい、あるカップルを襲い、男を殺して脳を食べた。
人間の脳を襲えば、その者の記憶を得ることができるという。
Rは、男がジュリーと呼ばれる女性と愛し合う記憶を脳内で観て、その女性が目の前で怯えて佇んでいる姿を見た途端、一目で恋に落ちた。
Rは、彼女を殺すことも食べることもできず、アジトへ連れ帰った。

Rのアジトにはゾンビがうようよいて、生きた人間が留まるのは危険だった。
しかし、ジュリーと共にいたいRは、彼女の体に腐敗した血や体液を塗り付けて(うげっ)、身を隠させた。
食べなくては生きていけないジュリーのため、食料を取りに行くも、自分の尺度で考えているので、彼が取ってきたものは──!。
当然、ジュリーはその隙に逃げ出したが、そこはゾンビの巣。生きた人間だと見抜かれ襲われそうになったが、Rはジュリーを助け‥‥自分から逃げたことを責めることをしなかった。

Rはジュリーを生かすために食料を与え、気晴らしなるようにと音楽を聞かせる。
ジュリーは、自分に危害を加えるどころか、自分を助け、守り、そして気遣うRの心を知り、徐々に惹かれていった。
二人はいつしか恋人のように共に過ごし、楽しい日々を送っていた。
仲間のゾンビに、ジュリーは食わないと宣言した為、アジトにいられなくなったが、後悔はしてはいなかった。

ある日Rは、ベリーを食ったのは自分だと明かし、ジュリーは、「もう貴方とはいられない」とRの元を去ることとなった。
その時から、不思議なことにRに“人間味”が生まれつつあった。
眠らない筈のゾンビが眠り、夢までも見たのだ。
それはR以外の他のゾンビにも起き始めていたことだった。
Rとジュリーの交流が、自分たちに変化をもたらしたのだった。

そこからは‥‥。ディズニーばりの、恋愛映画の王道へとまっしぐらである。
ベタな少女漫画の『こうなったらいいな』のシチュエーションが余すことなく出てくるので、これは‥‥製作者も狙ってやっているとしか思えない。
トムハンクスと人魚の純愛映画も、王道の恋愛映画を突き進んでいたが、それに匹敵するものがある。

そしてラストはまさに──視聴者が求める『こうなったらいいな』を実現して終わるという、実に清々しいゾンビ映画となった。


挿入歌(紹介文については、歌が流れていた『場面』を指します)

Sitting in Limbo - Jimmy Cliff
https://www.youtube.com/watch?v=S06yNUDNtH4
OP

Missing You - John Waite
https://www.youtube.com/watch?v=k9e157Ner90
レコードをかけて聴くR

The Bad in Each Other - Leslie Feist
https://www.youtube.com/watch?v=NYWzJrY3JPw
ゾンビ達と群がって歩くR

Be the Song - Foy Vance
https://www.youtube.com/watch?v=5HYDsd3fOOE
ジュリーの彼氏の脳を食べてジュリーの記憶を得るR

Patience - Guns N' Roses
https://www.youtube.com/watch?v=ErvgV4P6Fzc
ジュリーと共に、レコードを聴くR


Shell Suite - Chad Valley
https://www.youtube.com/watch?v=F8Z81lL1aZE
ジュリーとドライブにでかけるR

Hungry Heart - Bruce Springsteen
https://www.youtube.com/watch?v=lQSn26zCXYQ
Rに、お気に入りのレコードを聴かせてあげるジュリー

Shelter from the Storm - Bob Dylan
https://www.youtube.com/watch?v=4rKEXFSw54M
ジュリーが、Rに彼が亡くなったことを告げる

Hinnom, TX - Bon Iver
https://www.youtube.com/watch?v=ve5dUOWI0q4
夜。Rと、自宅へと向かうジュリー

Yamaha - Delta Spirit
https://www.youtube.com/watch?v=-wmDAEan0f8
朝起きたらジュリーがおらず、恋をあきらめるR

Oh Pretty Woman - Orbison
https://www.youtube.com/watch?v=lnRS3A_iIYg
Rのメイク。ジュリーが曲を変えろと嘆く

Midnight City - M83
https://www.youtube.com/watch?v=dX3k_QDnzHE
シャワーを浴びて、本格メイク

Runaway - The National
https://www.youtube.com/watch?v=3dC4bHlNCr4
ED1

Numbers Don't Lie - Mynabirds
https://www.youtube.com/watch?v=VvPBXE2Ikjs
ED2


ペットセメタリー

1989年/米
監督:メアリー・ランバート
原作:スティーブン・キング
主演:デイル・ミッドキフ/フレッド・グウィン/デニーズ・クロスビー 他


田舎町だが、自然豊かな大きな家に越してきたクリード一家。家族構成は、優しくて頼りがいのある医師ルイス。若く美しい妻レイチェル。子供は2人で、娘エリーと弟ゲイジの4人家族‥‥と、飼い猫チャーチ。まさに絵に描いたような幸せな家族である。
しかし、こんな幸せな家族にも不満が1つ。越してきた我が家の真ん前の道路を、昼夜問わず大型トラックが猛スピードで駆け抜けていくことである。
ジャド曰く、この道路では動物がよく轢かれるため、脇道には轢かれたペットを弔う墓地続いているといい、越してきたことを死者に挨拶する為、ジャドとクリード一家は墓地を訪れた。
手作りの墓地の門には同心円状に墓が並び、ジャドが大昔に弔った愛犬もここに眠っている。
ジャドは、子供に『死』を教える良い機会だとして教えたのだ(こんな生々しい教え方しなくても‥‥)。

翌日、その日はルイスにとって病院での初勤務の日。
パスコーと言う青年が事故に遭い運ばれてきた。頭部が砕け、もはや蘇生の見込みはゼロの筈なのに、パスコーは目を開けてルイスの名を呼ぶと、「男の心は岩のように固い。また、あんたの前に現れる」と言って、絶命したのである。
その夜、ルイスの枕元にパスコーが立ち、ルイスをペット墓地へと案内する。墓地の奥の藪を指差して「この先は死者たちが歩く場所」「あの境界を越えてはならない」「境界の向こうの土地は腐ってる」と忠告するのである。

翌日、レイチェルと子供たちが、感謝祭でシカゴの実家に帰省している間、ルイスはジャドから『愛猫チャーチが家の前で死んでいる』との知らせを受けた。
チャーチは首が折れ、血と霜が混ざり合い、地面に凍ってへばりついてた(引き剥がすときのベリベリ‥‥という音が気持ち悪い)。

娘が可愛がっていた猫である。娘になんと謝ればいいのかと悩むルイスに、ジャドは「いい方法がある」と言い、ペット墓地へルイスを連れて行った。
ジャドが向かう先は、パスコーが警告していた『藪の向こう側』だった。。
藪を抜けた先には『ミクマク族の埋葬地』である巨大な1枚岩があり、その中心にチャーチを埋めるようジャドは言う。
死体は、埋めた相手の元に戻ってくる。だから、飼い主であるルイスが埋めなければならないとジャドの言葉に従い、ルイスは指示通りにチャーチを埋めた。

翌日、チャーチは、死体を埋めたルイスの元に戻ってきた。
しかし何かが違う。酷い腐敗臭を放ち、攻撃的になっていた。姿こそチャーチだが、中に入っているのは“別の何か”のようだった。
ルイスは、この不思議な現象が起こった理由は?なぜジャドはそれを知っていたのか?今回自分が埋めたのは猫だったが、『人間を埋めた事はあるか』と矢継ぎ早に聞いた。
ジャドはひどく動揺し、その姿を見たルイスの脳裏には、もしかしたら──という考えが浮かんだ。

ある日、クリード一家とジャドは凧上げをして遊んでいた。
ゲイジは、自身の手を離れた凧を追ってあの道路に歩き出てしまい‥‥一家の目の前でゲイジはトラックに撥ねられてしまう。
ルイスは泣き叫び、葬式を終えて埋葬した後、一目で良いから、もう一度ゲイジに会いたいと願った。
するとジャドは、もしかしたらという思いに駆られたのだろう‥‥。ルイスのもとを訪ねた。
猫を埋めて生き返らせたように、あの埋葬地にゲイジを埋めようと言う考えを持っているのであれば、即刻その考えは捨てろとジャドは警告する。
実は彼はあの墓地に人間を埋めたことがあった。──息子を埋めたのだ。ルイスと同じように、死んだことを認めたくなかったのだ。
埋めたジャドの元に、息子は戻ったが、腐敗臭を放った息子は人としての魂がなく、攻撃的で、違う生き物のように暴れ回り、結局殺してしまったという。
ゲイジも、蘇らせても必ずそうなる。だから絶対に埋めようとするなと、ジャドは何度もルイスに言い聞かせた。
しかし、ゲイジを失ったルイスには、ジャドの警告は耳に入らなかった。
ルイスはスコップとつるはしを持って墓へ行き、ゲイジを掘り出して‥‥あの墓地へと向かう。

「どんな姿でもいい。戻っておいで」

あまりに恐ろしくおぞましい話のため、映像化が躊躇われたほどの作品。
話としてはホラーだが、とても悲しい。子を失った親の『それでも、一目でも会いたい』という深層心理を点いている。
物語は、転がる様にバッドエンドに突き進んでいき、ラストはもはや後味が悪すぎの、救われない終わり方となる。

『死者を墓地に埋葬すると蘇るが、何かが“足りない”』という設定は、後に多々の作品でオマージュされている。
日本でも稲垣吾郎主演でオマージュされているが、あいにく日本は『火葬』なので“墓場に埋める”設定は使えない。
そのため、『黒魔術』で蘇らせる──という形にしたのだが、この作品は“墓場に死体を埋めると、蘇り、埋めた者の元に戻る”から怖いのであって‥‥。この作品のおどろしさには敵わなかった。

なお、父が壊れていく様を、霊を通して感じ取る娘の吹き替え版は林原めぐみさんが演じている。
半狂乱になり、「父がおかしい!」と泣き叫ぶさまは真に迫り‥‥元の子役より上手い(;´・ω・)


挿入歌(紹介文については、歌が流れていた『場面』を指します)

Sheena Is A Punk Rocker - Ramones
https://www.youtube.com/watch?v=7vNrZcs44QU
ゲイジを轢いたトラックの車内音楽

Pet Sematary - Ramones
https://www.youtube.com/watch?v=F3J0iwwsq-w
ED


遊星からの物体X

1982年/米
監督:ジョン・カーペンター
原作:ジョン・W・キャンベル
主演:カート・ラッセル/A・ウィルフォード・ブリムリー/リチャード・ダイサート 他


1982年冬‥‥南極大陸。
ノルウェー隊のヘリがアメリカ基地上空を旋回しながら発砲をしている。
何事か!?と外へ出ると、彼らは1頭のハスキー犬をヘリから狙撃していた。
ハスキー犬は助けを求めるかのようにアメリカ隊員に駆け寄り、アメリカ隊員は、その犬をなだめてやった。
犬を射殺しようとしていたノルウェー隊員は、犬をかくまうアメリカ隊員に銃を向けた。
言葉が分からないため困惑していると、なんとノルウェー隊員がアメリカ隊員に向けて発砲!
犬を狙って的が外れたのだろうが、それでも仲間を撃たれたアメリカ隊員は激怒し、彼を射殺した。

ノルウェー隊の常軌を逸した行動に疑問を持つ隊員。
だがここは南極。娯楽もないこの世界では、うつ病になる者もいるだろう。「でも、まだ8週間前にやってきたはずだろ?」「5分でイカれる男もいるさ。パーマーは1日目から変だぞ」
‥‥一体どんなヤワなメンタルなんだ(^_^;)
・彼らになにがあったのか知りたいと、マクレディとドクターはノルウェー基地に到着。
電気が点かない基地内を懐中電灯で照らしながら進んで行くと、壁には斧が突き立てられていた。
奥の部屋では、直方体の『氷柱』があり、中に入っていた何かが‥‥飛び出したように見受けられた。
外には灯油の缶と焼死体。その死体は、一見すると人間‥‥だが、人間ではない。なぜならそれは、2人の人間がくっついたような、不気味な生き物だった。
2人はそれを持ち帰り、分析することにきめた(持ち帰るな!)
※この時に何があったのかは、『遊星からの物体Xファーストコンタクト』で描かれている。

持ち帰った死体の解剖をしている医者。う〜ん、手袋の丈が短いなぁ〜。
夜になり、ノルウェー隊に追われていた犬が檻に入れられた。人間が姿を消すと‥‥もともとアメリカ隊が飼っていた犬が、得体のしれない恐怖におののき、その犬に向かって一斉に吠えだした。
ノルウェー隊の犬は、頭部が四方に裂け、触手を生やして檻内の犬を捕え始めたのである。
この裂けた犬も、恐怖におののく犬も、いい演技を見せてくれます。
この時演じた犬たちは、その後はひっぱりだこで色んな作品にも出演していますが、裂けた犬を熱演したジェド君の演技は、ディズニースタッフの目に留まり、『ホワイトファング』という映画に大抜擢されることになるのです
吐き気がするほどの超グロ犬を演じたジェド君を、どうして華やかなディズニーが「この子だ!」とオファーしたのだろう‥‥。
『怖がらせる演技』は非常に難しいらしく、逆にその役ができれば、どんな役さえもこなせるらしい。

警報を出して隊員らが駆け付けると、裂けた犬はもはや『犬としての姿』をとどめてはおらず、触手はハスキー犬をからめとり、からめとられた犬は、犬としての姿を失いつつあった。
とにかく始末しようと、隊員らは、その“生き物”と、いまだ息の残っている犬もろとも射殺した。

犬を解剖すると、体内から、犬のものではない内臓が見つかる。
“生きもの”は、他の生物に寄生し、その生物の姿を変えられる。生物を襲い、消化して吸収し、吸収しつくせば‥‥その生物の姿に変わっただろう。
もともとの生物の姿と、何も変わらず生き続ける。‥‥‥‥本人の自覚もないままに。

ノルウェーから、気味の悪い死体を持ち帰ってから変な事が起こった。
いや‥‥あの犬が来てからだ。じゃあ犬の前は──?やっぱりあの気味の悪い死体が元凶か?
しかし、不気味な死体はまだ基地の中。ウィンドウズが「どうして死体を燃やさないんだ!?」と聞くと、「世紀の大発見だから」だって!
不気味な事が起こり、飼っている犬が死に、自分達の身さえも危ういというのに、名誉を優先することに、ウインドウズは大変な不信感を抱いた。
そんな中、ベニングスが、実験室に保管していた“生き物”の触手に絡め取られ、寄生されているのを発見し、すぐさま雪上車にいるマクレディの元へ。
しかし、戻ってくると‥‥ベニングスの姿は消えていた。
辺りをくまなく探すと、ヨロヨロしながら、ベニングスが雪の上を歩いている。
声をかけようとして驚愕する。手から先には指が無く、奇妙な形の触手が生えている。口を開けば、それは彼の声ではなく、不気味な咆哮。
マクレディは大慌てで火を放ち、かつて“ベニングスであったもの”を焼いた。

ベニングスは、“生き物”に変わる途中だった。もしこのままだったら、やがて支配され、ベニングスの姿をした“生き物”になるのだ。
もしかしたら、他の者もそうかもしれない。既に“生き物”なのかもしれない。
互いに疑い始めてとっくみあいになり、あおりをくらったノリスは跳ね飛ばされ、意識を失ってしまう。
すぐに蘇生をしようと除細動器を胸に宛がった瞬間──ノリスの胸部が割れてドクターの腕が食いちぎられてしまう。
すると、かつてノリスだった“生き物”は、うめき声をあげながら胴と首が離れ、首は首だけで動き始めた。
ノリスは、自分が“生き物”だった実感がなかった。声も、行動も、意識も‥‥紛れもなくノリスだった。
自分では、“生き物”に寄生された自覚すらも無いのだ。

マクレディは、“生き物”を火炎放射器で倒そうとしたから“人間”だとし、隊員が“生き物”か“人間”かの実験をする役を任された。(『味方に味方する者は味方』という陳腐な論理だが、いまはそれしかない)。
“生き物”は自らに危害を加えるものから逃げる習性がある。電気ショックから逃れようと正体を現したように、炎からも逃げるだろう──と。
「ノリスは、体中が生きていた。人間が流した血は静かに死ぬだけだが、“生き物”は違う」
血の一滴さえも独立した生命なのだ──。

マクレディは、隊員らの指をナイフで斬り、シャーレに注いでいく。そして銅線を熱し、血のシャーレへ──。
全く自覚が無いままに寄生され取り込まれる恐怖など、誰にも想像できなかった。
皆、『自分だけは‥‥』という思いでシャーレを静かに見つめていた。


挿入歌(紹介文については、歌が流れていた『場面』を指します)

DON'T EXPLAIN - Billie Holiday
https://www.youtube.com/watch?v=0MWRheQtvmA
基地内で卓球をしていた時にかかっていた曲

SUPERSTITION - Stevie Wonder
https://www.youtube.com/watch?v=0CFuCYNx-1g
ノールスが調理室で大音量でかけていた曲