ルビー・スパークス

2012年/米
監督:ジョナサン・デイトン
脚本: ゾーイ・カザン
主演:ポール・ダノ/ ゾーイ・カザン/ アネット・ベニング他


・小説家のカルヴィンは、若いながらもベストセラー作家であり、巷では『天才』とも言われていた。
最近ではスランプに苦しみ、見かねた兄から「恋人が出来ればきっと新たな作品が書けるよ」とアドバイスをされたが‥‥カルヴィンはコミュ障で根暗で、友達皆無だった。
自分に好意を持ってくれる女性は現れたことはあったが、彼女は自分の才能と印税に興味があるだけで、カルヴィン本人を好きなわけではなかった。
そういう事が何度か続いたあげく、<すっかり人間不信になってしまったカルヴィンは、現在は心療内科に通っている(可哀そうに)。
・ある日、精神科医はカウンセリングを兼ねてカルヴィンにこう提案する。「『あなたの飼い犬を可愛がる女性』の物語を書いてみなさい」
カルヴィンは気乗りしないまま、適当に1ページ書いて眠りについた。すると、その1ページの光景が夢のなかで忠実に再現されたのである。
夢の中の女性に好意を持ったカルヴィンは、女性を「ルビー・スパークス」と名付け、『カルヴィンの飼い犬とルビーの物語』を書き始めることにする。
・小説を書き始めてから、カルヴィンの周囲で奇妙なことが起こり始め、部屋に『女性の気配』がたびたび感じられるようになる。
ある朝、キッチンで朝食の支度をしているルビーの姿にカルヴィンは驚愕する。
心療内科に通ってはいるが、ついには幻覚まで見るようになってしまったのか──と落ち込むが、なんとルビーの姿は他の人にも見えていた。
ルビーは、カルヴィンが設定した通りの『姿・声・しぐさ』で語り掛け、カルヴィンは、彼女が『自分が具現化させた女性』と確信する。
兄はルビーを見るなり二人の恋を祝福するが、カルヴィンは彼女を『自分が造り出した偶像』だと説明する。
全く信じない兄に対し、カルヴィンはルビーの設定に『フランス語も話せる』と追加。物語内に「ルビーが流暢なフランス語で兄とカルヴィンに話しかける」と書き加えた。
すると、ルビーは流暢なフランス語で話しかけ‥‥兄もビックリ。
・ルビーの存在を気味悪がるカルヴィンに対して、兄は羨ましそうだった。「これってさぁ、設定のさせ方や物語の書き方次第で、自分を好きになってもらうことも出来るんだよな?」と、『理想の彼女』を造るよう提案(オイオイ💦)。
するとカルヴィンは大激怒。彼にとっては、夢の中で出会ったルビーが自分の中での最高の理想の女性であり、その女性が現実に出てきた。彼女に対し、これ以上望むものはない。それに、ルビーは操られるために自分の前に具現化されたのではないと断言したのだ。
その為物語は封印し、今の自分にとっての最高の彼女ルビーと共に過ごすことを決めたのである。
・カルヴィンはルビーを友達に紹介し、『俺の最高の彼女』と自慢しまくる。
ルビーは社会に出ることで自我が完全に確立し、見るもの触るもの全てを吸収し、純粋無垢なあくなき探求心で周りの人気者となっていく。
コミュ障で根暗なカルヴィンが、ルビーに話しかけてもらいたいと彼女に設定させた“社交的”な性格により、ルビーの行動範囲はドンドン広がり、いつしか『カルヴィンだけの彼女』から徐々に離れていきつつあったのだ。
カルヴィンは自分に戒めた禁を犯し、物語を取り出して‥‥つい、一言書き加えてしまう。
・月日が経つと、ルビーは更に行動範囲を広げ、絵画教室にも通い始め、そこで新たな友を持ち、いつしかカルヴィンと過ごす時間が無くなっていく。
カルヴィンが与えたルビーの初期設定『明るい・社交的・ポジティブ思考』のスペックが強すぎて、カルヴィン以外の男性らもルビーの事を好きになってしまい、ルビーもまんざらではない様子の為、カルヴィンは嫉妬してしまう。
ルビーを独り占めしたいカルヴィンは、ルビーの気持ちが離れそうになる度に、『ルビーはカルヴィンと一緒にいたくなる』『ルビーはカルヴィンと離れたくなくなる』『ルビーは‥‥』とドンドン書き加え、いつしかルビーを支配するようになる(ルビーを変える前に、なぜ自分の性格を変えようとしないんだ💥)。
・既に普通の女性と同じように生活しているルビーは、時折、自分の言動が自身の意に反している奇妙さに気づくようになってきた(ついにXデーがやってきたのだ!)。
最初のルビーの記憶は、カルヴィンの家のキッチンから始まっている。カルヴィンなら何か知っているかもしれないと、ルビーはカルヴィンに『自身の謎』について問いただすのだった──。

こんな女性がいたらいいな〜と脳裏に描いた女性が具現化される。果たしてそれは人間と言えるのか?
人間として、共に過ごすことはできるのか?
女性が自分の存在に気付いた時、生み出された女性は、自分を受け止めることはできるのか?
夢物語でありながら、コメディで、とても哲学的な話です。
カルヴィン目線でストーリーが進むため、女性がルビー目線で見てしまうと気の毒に思えてくるシーンがあるので注意が必要です。


挿入歌(紹介文については、歌が流れていた『場面』を指します)

Ca Plane Pour Moi - Plastic Bertrand
https://www.youtube.com/watch?v=xTo79sPCVXA
ゾンビ映画を観て盛り上がるカルヴィンとルビー。

Quand Tu Es La - Sylvie Vartan
https://www.youtube.com/watch?v=XF7FSrFP2qA
カルヴィンとルビーがドライブ

Nick Urata - Inseparable
https://www.youtube.com/watch?v=9WlQdCjJKcQ
カルヴィンなしでは生きていけなくなったルビー


もしも昨日が選べたら

2006年/米
監督:フランク・コラチ
主演:アダム・サンドラー/ケイト・ベッキンセイル/クリストファー・ウォーケン 他


・マイケルは、アンマー社長の会社で働いている建築士である。
家族は、大恋愛の末に結婚した妻のドナと、息子ベン、娘サマンサの4人家族。両親もいまだ健在である。
どこにでもいるアットホーム家庭で、『幸せ』を絵にかいたような暮らしぶりをしているのですが、当の本人は、自身の恵まれた生活に気づいていない。
仕事人間のマイケルは、アットホームな家庭が邪魔であった。両親との食事は億劫で、週末のキャンプも行きたくない。できれば、ず〜っと仕事をしていたいと思っていた。
仕事が上手く進まないと、些細なことでも癪に障りだす。
エアコンのリモコン、テレビのリモコン、照明のリモコン‥‥と、周りはリモコンだらけ。1秒でも時間を無駄にしたくないマイケルは、どのリモコンが何を操作するのかも考えたくないし、操作して違うリモコンだった時の時間の勿体なさにイライラ。
その為、深夜にホームセンターに行き(明日まで待てんのか)。『万能リモコン』なるものを購入した。
店員は、「あなたはモニターです」と言わんばかりに、無料で不思議なリモコンを差し出した。無料であげる代わりに、返品はできないと告げて──。
返品無理と言われたとこで、だったら捨てればいいだけの話なので、マイケルはそのリモコンを貰って帰った。

・帰宅すると、愛犬が散歩を要求し吠え出した。
仕事が山ほど残っているマイケルに、散歩に行く暇などない。
マイケルは、愛犬の吠える声がウルサイと、ほんの冗談のつもりで、愛犬に向けて『音量小』を押したのである。
すると‥‥不思議なことに、愛犬の吠える声が小さくなっていき、『消音』することもできたのであった。
不思議な現象はそれだけではなかった。
家事に協力してくれないと、嘆く妻の愚痴を聞かされたマイケル。
もしかしたら──と、『早送り』のボタンを押したところ、妻の愚痴は早送りになり、なんと一時停止も可能(笑)。
それはもはや、機械を万能に操作できるリモコンではなく、マイケルがリアルタイムで経験し体験している“出来事”を、万能に操作できるリモコンであった。
・マイケルは夢中になってリモコンを操作し、社長講義をリモコンで制御して楽しみだす。
 社長の話す言葉をスペイン語にしたりする言語変換は欲しい!
 とにかくこのリモコンは私生活のみならず会社でも大活躍。日本企業との取引では相手の言葉を自動翻訳。翻訳を介さないスピード取引で相手との距離感を縮め、トントン拍子に出世していくのである。
・万能リモコンにより人生の勝ち組(?)になったマイケルは、自身の出世祝いにとあれこれ爆買いするものの、実は『出世が決まった』のは間違いで、正しくは『契約が決まったら出世』であった。
しかし、契約は決まったも同然だから早くしてくれと頼むマイケル。しかし社長は首を縦に振らなかった。
出世するまでの期間が待てない気の短いマイケルは、自身の人生を『早送り』してしまったのであった!
・『再生ボタン』を押したら、そこは1年後の世界。2か月の早送りのつもりであったが‥‥結果的に出世できているので、まぁいいかと、マイケルは納得した。
しかし‥‥この万能リモコンには恐ろしい裏があった。
リモコンには学習機能があり、一度使った操作はその後、ユーザーが望まなくても何度でも自動で操作されてしまう。
つまり、一度『早送り』を操作してしまったら、学習機能で、マイケルが望まなくても『何度でも自動に早送り』されてしまうのである(怖)。
マイケルは、妻の愚痴が開始されたら早送りを操作していた。
ということは‥‥妻の愚痴がスタートしたら、その時マイケルが望まなくても、人生が早送りされてしまうのであった。
なるべく妻を刺激しないように大人しく過ごすマイケル(汗)だが、このリモコンを手にする前から元々愚痴が多い妻である為、あるスイッチが入ると愚痴がスタートされ恵、その瞬間に人生が早送りw
更に、最初に『早送り』ボタンを押した時は、『出世』がチラついた時だった。ということは‥‥。
社長から出世を言い渡された瞬間、またもや人生が早送りにw

・人生を謳歌する暇もなく、猛スピードで駆け抜けていくマイケルの人生。
しかし、あるタイミングでピタッと『早送り』しなくなった。
なぜなら、マイケルが社長になった為、これ以上の『出世』がない為。
そして‥‥妻と離婚した為、妻の愚痴を聞かされることが無くなったからだ。

気づいた時には全てを失っていたマイケルは、途方に暮れるのであった。



挿入歌(紹介文については、歌が流れていた『場面』を指します)

Magic - The Cars
https://www.youtube.com/watch?v=E0Kv6vxZwL8
OP

Do It Again - The Kinks
https://www.youtube.com/watch?v=Lqil8_JFCVU
出勤するマイケル

22 Days - 22-20s
https://www.youtube.com/watch?v=KFXhD5Y_Q90
寝具とバス用品店に入るマイケル

Love Will Keep Us Together - Captain & Tennille
https://www.youtube.com/watch?v=0aU57V6VBW0
過去-1976年の砂浜へ

Hold the Line - Toto
https://www.youtube.com/watch?v=8mkmUdUYgH0
キャッチボールをする息子と隣人の子

20th Century Boy - T. Rex (as T Rex)
https://www.youtube.com/watch?v=JB6WZu8IAZg
食事の時間を飛ばして独りの時間へ

Everybody Wants to Rule The World - Tears for Fears
https://www.youtube.com/watch?v=aGCdLKXNF3w
10分の時間すら取れないのかとなじられ、時間を早送りするマイケル

Working for the Weekend - Loverboy
https://www.youtube.com/watch?v=ahvSgFHzJIc
マイケルが信号待ちの時、大声で歌う黒人がウザく‥‥消音に

With Plenty of Money and You - Count Basie & Tony Bennett
https://www.youtube.com/watch?v=-pwdaj4YtBQ
子供たちに自転車を買ってやるマイケル

Linger - The Cranberries
https://www.youtube.com/watch?v=G6Kspj3OO0s
初めてキスした時に、店内でかかっていた歌

The Best Things in Life Are Free
https://www.youtube.com/watch?v=QeLE9beOeAE
息子の結婚式でのジャズ曲
※原曲は古すぎてYOUBUTEになかった…。

I'm Gonna Live Till I Die - Frank Sinatra
https://www.youtube.com/watch?v=b9024VFH8rQ
翌日、出勤したら社長がお待ちかね

Someday - The Strokes
https://www.youtube.com/watch?v=knU9gRUWCno
バスローブ姿で、自転車で出勤するマイケル

Feelings Got to Stay - Ric Ocasek
https://www.youtube.com/watch?v=6UWR-naeBFQ
カーラジオから流れる、2017年2月5日のニュース

Call Me Irresponsible - John Pagano
https://www.youtube.com/watch?v=WKgZL54ohAY
結婚式で白のタキシードの男が歌った歌

Linger - Dolores O'Riordan
https://www.youtube.com/watch?v=KxbtgLXn4bY
結婚式。一時停止中、男がパンツを降ろされた時にかかっていた歌

Ultra Violet (Light My Way) - U2
https://www.youtube.com/watch?v=vITDe7DKDFo
全ての時間が巻き戻り、大急ぎで家に帰るマイケル

Making Love Out of Nothing at All - Air Supply
https://www.youtube.com/watch?v=ogoIxkPjRts
メスだと聞いて飼ったブルドックがオスだと知ったマイケル

You Get What You Give - New Radicals
https://www.youtube.com/watch?v=DL7-CKirWZE
ED-1

Everybody - Ric Ocasek
https://www.youtube.com/watch?v=O4suoVMyk6w
ED-2


ハンコック

2008年/米
監督:ピーター・バーグ
音楽:ジョン・パウエル
主演:ウィル・スミス/シャーリーズ・セロン/ジェイソン・ベイトマン 他


・ハンコックは、人間でありながら、人間とは思えない強靭な力を持ち、空を飛ぶことができ、なおかつ不死身の肉体を持つ男である。
彼こそは、ロサンゼルスが誇るスーパーヒーロー‥‥のはず‥‥だった。
しかし、皆、彼の事が嫌いだった。疎ましいと思ってさえいた。
助けを求められ、救助に向かったはいいものの、飛び立つ前の踏み込みで地面のアスファルトが抉られるため、舗装するまでその車線が使えなくなってしまう。
飛行中には飛行機とニアミス(危ない!)。標識を壊して交通事故を起こす。
折角市民を助けたのに「もっと静かに出来ないのか?」と叱られ、悪党を退治しても「辺りを破壊せずに戦えないのか」と、まるで感謝されない。
まるで台風が去った後の被害の後始末に追われ、損害を被るだけの市としては、悪態をつきたいのもわかる気がする。
ハンコックという超人的な存在がいる社会を、当たり前のように受け入れている市民が笑える。

・ある日、ハンコックは貨物列車と衝突しそうになった車の運転手を助けた。
その男の名はレイ。仕事は『広告戦略』。彼との出会いによって、ハンコックの運命は大きく変わることになる。
・レイはハンコックにイメージアップをするにはどうしたらいいかを教え、今までの“行き過ぎた行動”を全て詫び、検察の望むとおりに服役する事。とにかく『素直』に従うことを覚えさせた。
なぜ、服役させるのか──。ハンコックが牢屋に入っている間、ロサンゼルス内にはハンコックは不在となる。
つまり‥‥ハンコックがいなかったら、ロサンゼルスの治安はどうなるか。それを世間に知らしめてやろうと目論んだのだ。
案の定、ハンコックが不在になったロサンゼルスの治安は地に堕ち、あちこちで犯罪がのさばりはじめた。
警察も犯罪者に歯が立たず(っていうか、治安悪すぎ)、「あぁ‥‥やっぱりハンコックは必要だ!」と誰もがハンコックの復活を望んだのである。
ついに、警察はお手上げで、狙い通り、所長自らハンコックに助けを求めることとなる。
助けを求められたハンコックは、いとも簡単に銀行強盗犯を捕まえ、『市に平和が戻った』と、市民からの惜しみない拍手を浴びたのである。
・人から感謝される喜びを知ったハンコックは、打ち上げに参加。
レイとメアリーに、自らの過去を語りだし、マイアミで頭蓋骨を骨折するほどお大けがを負ったが、それより前の記憶が無いことを明かした。
打ち上げで仲間(?)と呼べる存在を得て、人にも感謝され、嬉しくなって有頂天になったハンコック。
ただ『良い人』を演じたところで、残念ながら『素』は変わらないもので‥‥。
メアリーに不意打ちにキスをしてしまう。ここまで打ち解けたら良いだろうと思うハンコックも酷いが、メアリーも負けてはいない。
ハンコックを突き飛ばしたのだが──。女性の力でここまで‥‥っていうか、人間とは思えない力で吹き飛ばされるハンコック。
実はメアリーも、ハンコックと同じ超人的な能力を持つ一人であった。
・超人的な力を持つことで、『人と違う』や『人間じゃない』とか、更には『化け物』とさえ蔑まれて心を病み、荒くれ者となったハンコック。
こんな力はてっきり自分だけだと思っていたが、同じ能力を持つ人間が‥‥こんなにも近いところにいたことに喜んだハンコックは、親愛的な気持ちでメアリーを呼び出すが、なぜか闘う羽目に──。

実はハンコックとメアリーは元夫婦。
ハンコックはその記憶を失くしていたのだった。


挿入歌(紹介文については、歌が流れていた『場面』を指します)

Move Bitch - Ludacris featuring Mystikal and I-20
https://www.youtube.com/watch?v=tw429JGL5zo
OP

Best Dressed Chicken In Town - Doctor Alimantado
https://www.youtube.com/watch?v=OhlAi2FfPhw
ハンコックが、自身をクズ呼ばわりした子を上空へ飛ばしてしまう

Wasted Days And Wasted Nights - Freddy Fender
https://www.youtube.com/watch?v=TUVgkXVDkBA
ハンコックに取られたパワーを取り戻したいと嘆く男性

Here I Come - The Roots ft. Malik B. and Dice Raw
https://www.youtube.com/watch?v=PcECnNRBhNs
ED1曲目